アルペンスキーのルール

アルペンスキー競技のルール・種目(滑走・大回転・複合等)・ターン技術・基礎知識の解説。

◆アルペンスキーのルール

◆アルペン種目の種類は6種類の競技種目に分類

【アルペン種目の種類とは?】

アルペン種目の種類は、大きく分類して6種類の競技種目に分類される。

尚、競技項目として分類されているアルペン種目は以下の表に記載する6種類の競技である。

【アルペン種目の種類】
日本名呼び方・英語表記
☆滑降ダウンヒル(Downhill)
☆スーパー大回転(Super Giant Slalom)
☆大回転(Giant Slalom)
☆回転(Slalom)
☆複合(Combined)
☆スーパー複合(Super Combined)

ウィンターシーズンに入ると注目を集め始めるのがアルペンスキー競技である。

近年はモーグルやスノーボード競技などに人気が集まる傾向があるが、北欧地域を中心としたアルペンが盛んな地域ではアルペン競技の人気が今も尚、群を抜いている。

冬季オリンピックが行われる年度は上記表に記載した各種目の違いや特徴にも注目である。

◆滑降・ダンヒル(ダウンヒル)は最も高速かつ最も長い距離を滑走するアルペン競技種目

【滑降・ダウンヒルとは?】

滑降・ダンヒル(ダウンヒル)は、アルペン競技種目において最も高速かつ最も長い距離を滑走する競技種目である。

滑走スピードはスタート直後の急斜面を勢い良く下りながら徐々に加速しコーストータルの平均スピードは100キロを常時超える。

また中盤以降の最高速度に達する区間においては時速150キロを超えてくる。

自動車でも時速150kmと言えば高速域に入るが、接地面がスキー板の裏面のみという状況下で生身の人間が起伏のある斜面をコントロールしながら滑走する競技がダウンヒルである。

このことからも危険性においてもアルペン競技種目中、最も危険性の高い競技であることもわかるだろう。

日本では、「ダンヒル」と思われているケースが多いが正しくはダウンヒル。

わずかな微調整のずれや重心のずれで結果が大きく異なる競技であることから、何よりもコースの性質を見極める経験と調整力、そして滑走中の姿勢を維持する筋持久力が重要と言える競技でもある。

実際にダウンヒル競技の選手の太ももは女性であっても、非常に強靭でありその太さからも筋断面積の大きさが伺える。

◆ダウンヒル滑降競技における最大の敵は空気抵抗

【空気抵抗との戦いが続く】

ダウンヒル滑降競技における最大の敵は、コース以上に高速に達した時に人体に襲い掛かってくる「空気抵抗」が大きい。

100キロを超えるスピードを生身の体で移動すると、その空気抵抗はすさまじいGとなってぶつかってくるのだ。

この空気抵抗を少しでも緩和させるために、ダウンヒルのストックは体の形状にフィットするように曲がりくねった形状をしている。

アルペンスキーヤーはトップ選手になるほどこのストックのカーブが人体にフィットするかどうかに関してもこだわりが深い。

またウェアに関しても空気抵抗が最も少なくなるよう、人体にフィットさせるよりも平滑面を多く持てるような構造になっている。

ダウンヒルやアルペン高速系競技のウエアがレーシングスーツと呼ばれるのもその為だ。

尚、選手自身ができる空気抵抗に対する措置は姿勢を維持する練習やバランスの強化など。

このアスリートの努力に加えてウェアやストック、ヘルメットに至るまで、技術開発は常に続けられている。

選手の技術力の向上はもちろん、使用できるわずかな用具に至るまで空気抵抗との戦いは今後も続くだろう。

◆最高時速150キロの世界ではどれだけ防護措置を施しても大怪我はまぬがれない

【ダウンヒルのスピード】

ダウンヒルはアルペン競技の中で最もスピードの出る競技である。

前述したように、その最高時速時速は実に150キロに達する。

そのため、コースの両脇には防護用のネットや雪で覆われたクッション性の壁などを設け選手がコースを飛び出した時の対策を施している。

しかし、やはり生身の人間。150キロにも及ぶスピードで衝突をすると、どれだけ防護措置を施しても大怪我はまぬがれない。

◆ウルリケマイヤーの事故

1994年のワールドカップ大会。

オーストリアの女性アスリート、ウルリケマイヤー選手がダウンヒルの滑走中に転倒。

そのまま速度計測機に衝突し、病院で亡くなるという痛ましい事故が発生している。

体重が男性よりも軽い女性であってもダウンヒルではやはり時速100キロ以上のスピードが優に出ている。

事実、ウルリケマイヤーの当日の事故時のスピードは120キロに達していたという記録がある。

この年、彼女は引退を覚悟し最後のシーズンとして挑んだ経緯もあった為か、あきらかに果敢に攻めるコース取りをしていた。

彼女の事故死はもう過去のものとなっている感があるが、この痛ましい事故は決して忘れてはならない。

◆スーパー大回転は滑降とともに高速系種目に分類

【スーパー大回転とは?】

スーパー大回転とは、滑降とともに高速系種目に分類されるアルペン競技。「スーパーG」とも呼ばれる。

アルペン種目としては元々、滑降と大回転が存在していた。

しかし、その中間にあたる「両方の特性」を組み合わせたよりスピードがあり、かつスラロームのターン技術を要する競技として誕生した経緯があり実際に歴史もまだ浅い。

尚、スーパー大回転がオリンピックで正式種目として認定されたのは1988年の冬季カルガリーオリンピックが最初である。

◆スーパー大回転では最低でも男子で35旗門女子で30旗門の旗門がコースに設置される

【スーパー大回転のルール】

スーパー大回転では、コースに設置された旗門を通過しながらゴール地点まで滑走を行い滑走タイムを競う。

大回転のコースを見てみるとわかるが、赤と青の旗門が一定の間隔を置いて左右に設置されているのがわかる。

この旗門は赤と青の旗門が交互に並べられており、最低でも男子で35旗門、女子で30旗門の旗門がコースに設置されるようにアルペン競技のルールで定められている。

尚、ひとつひとつの旗門の間隔に関しても「25メーター以上」とルールで規定されており、大回転に見合うコース設計となっている点もポイントである。

◆スーパー大回転もトップスピードは優に100キロを超えてくる競技

【スーパー大回転の特徴】

スーパー大回転は滑降と回転が組み合わさった競技である。

アルペン種目で最もスピードが出る競技種目はもちろん滑走である。滑降の滑走スピードは100キロを常時超えており、最高速度が150km近くにまで達する超ハイスピード競技である。

スーパー大回転も滑降ほどではないが、トップスピードは優に100キロを超えてくる競技。

このスピード感に加えて回転のターン要素も求められるスーパーGは体力や技術力はもちろん筋力、そしてバランス能力などすべての能力が求められる競技種目であると言える。

また、スーパー大回転は試走は一切認められないという特徴がある。

選手は滑走前に下見を行うことはできるが、実際に走行するコースで練習を行うことは一切できない。

1シーズンの間に何回か同一のスキー場に通った経験をお持ちの方はわかると思うが、スキー場の雪質は日によってまったく異なり、同一のスキー場であったとしてもスキー場のコンディションは午前とナイターで異なるほど変化するものである。

スーパー大回転のルール規定によって試走が一切認められない事から、選手はぶっつけ本番で挑むことになり予想される順位を超えて想像外の結果が出るケースも多く、その点もスーパー大回転の魅力と言えよう。

◆大回転はアルペン競技種目の中で最も人気が高い競技

【大回転とは?】

大回転は、アルペン競技種目の中で最も人気が高い競技として広く認識されている競技である。

見覚えのある方もおおいだろうが、5M間隔で訪れる旗門を高速パラレルターンで一個ずつクリアしていく競技である。

滑走時は高速となるためターンでは体を大きく傾け固いアイスバーンに近い斜面をガリガリと削り込みながら滑走する。

実際に競技場で観戦すると解るが、このスキー板のエッジが斜面のアイスバーンを削る音は想像以上に大きな音である。

尚、大回転ではターン技術が大きなウエイトを占めていることからも、大回転競技は「技術系競技」の代表として位置づけられている。
※スピード系の種目としてはスーパー大回転やダウンヒルがある

◆大回転のコースは平均斜度が15度~20度となるように調整されている

【大回転のルールとは?】

大回転のコースは平均斜度が15度~20度となるように調整されている。

やや急斜面ではあるが、これ以上斜度が緩くなると逆に転倒時の危険性が高まり、これ以上斜度がきつくなると、スピードのコントロールが難しくなり、ターンができなくなる。

このような経緯も踏まえて斜度は適切に大会当日までに調整されていく。

大回転の旗門は約5M感覚で設置されているのが通常。

この旗門の外側を通りながらゴールをめざす。

大回転の場合は滑走タイムを2本測定し、その合計タイムで順位を競うことになる。

1本目で仮に1位であっても2本目、3本目で転倒などをすると、入賞もできなくなることから長時間の集中力と体力も要される。

スキー板の長さには男子が185センチ以上、女子で180センチ以上という規定が盛り込まれている。

カービングスキーの登場により長いほど有利という時代は終わり、自分に見合う板を見つけることも選手の大切な使命となっている。

◆空気椅子に近い状態で強い衝撃を受けながら滑走するクローチング

【クローチングとは?】

クローチングとは、アルペン競技における最も加速ができ高速滑走が可能となる「姿勢」のこと。

アルペンレースの大回転以上の高速系ではこのクローチング姿勢の滑走が多く見られる。

クローチングの見た目は、小さくまるまったような格好になっており、姿勢は全体的に低く保たれ空気抵抗を最小限に抑えることを目的としている姿勢であることは容易にわかる。

しかし、大腿部を折り曲げた状態のいわゆる空気椅子に近い状態で強い衝撃を受けながら滑走するクローチングは、「大腿部前面の筋力」がかなり鍛えられていないと姿勢を維持することさえもできない。

太もも全面に位置する筋肉の代表は「大腿四頭筋」と呼ばれる筋肉である。

この大腿四頭筋は「大腿直筋」「内側広筋」「外側広筋」「中間広筋」の4つの筋頭を持ち末端の腱に向かい収束されるが、中でも大腿直筋の強化はクローチング姿勢を維持する上でも不可欠である。

0.01秒までのタイムを競うアルペン競技では、このクローチング姿勢をどのタイミングでどれだけの距離を滑走できるかが大きなポイントとなる。

◆クローチングターンとは?クローチング姿勢を保持したまま行う浅いターン

【クローチングターンとは?】

クローチングターンとは、前項で解説したクローチング姿勢を保持したまま行う浅いターンのこと。

ターン技術の中でも難易度はかなり高く、踏み込みよりも傾けと板のカービング性能を重視するターンとなる。

クローチングターンではパラレルのようなきれいな弧を描くターンはできないため、大きな斜線を描くようなターンとなる特徴がある。

イメージとしてはターンというよりも直滑降の方向性をコントロールしているイメージに近いと言えるだろう。

アルペン競技のダウンヒルでは、カービングスキーの性能を活かしたカービングターンを混じえたクローチングターンで両足の板の間隔を保ち重心の配置を移動する形でクローチングターンが行われる。

ただでさえ空気椅子に近い状態であるクローチングターンは、滑走面からの抵抗を受け、かつ重心を中心からやや傾けた位置に配置する為、大腿部周りの状態を保持する筋力も要し、更にターンによるターン弧の外面へのGを受け続けながらターンを完成させる必要がある為、シンプルであるが難易度が非常に高い技術であると言える。

◆ステップターンとは踏み出しと踏みけりの2種類の動作からなるターン

【ステップターンとは?】

ステップターンとは、踏み出しと踏みけりの2種類の動作からなるターンのこと。

スピードの維持をしながらターンを行いたい場面では踏みけり系のステップターンを行い、外足を強く蹴りだして山側に大きく体重を預けていく。

踏み出し系のターンは、斜面の蹴りよりも姿勢、スキー板の上のポジションをキープする事が重要であり筋力が必要。かつバランスの維持が重要となってくる。

ノルディックなどでは、走行中の方向転換の場面でも大きな弧を描きながらステップターンが多用されている。

◆カービングターンとは?

【カービングターンとは?】

カービングターンとは、意図的にスキー板への荷重を加え板のたわみによって発生したカービング孤を利用してターンする技術。

カービングターンは厳密にはパラレルターンの1種。

カービングターンは元々正しいターンを行うには谷足への荷重も必要となるため難易度が高いターン技術のひとつであった。

しかしカービングターンを容易に行えるように開発されたカービングスキーの登場により状況は一変。

現在はブーツの真下部分が細くスキーの両端が幅の広い形状であるカービングスキーが広く普及し誰でも一定の荷重でカービングターン同様の効果を得られるようになっている。

但しこの道具の発展は板の性能によってターンが大きく左右されることも意味する為、自分の演技に見合うメーカーとの出会いも重要度を増してくる。